【集う】第21回福岡アジア文化賞・学術研究賞 受賞決定伝達式

エドハーディー 受賞決定通知書を手渡される毛里和子・早稲田大学名誉教授(右)受賞決定通知書を手渡される毛里和子・早稲田大学名誉教授(右)

 □13日、東京都新宿区のリーガロイヤルホテル東京

 
中国研究は「しつこく迫っていきたい」

 「受賞できた最大の条件は、アジアという地域がいい時代に入ったこと。中国自身が脱皮して、研究にもタブーがなくなってきた。研究を始めた50年前は、誰も今のような中国を予想できなかった」。第21回福岡アジア文化賞の学術研究賞に選ばれた毛里(もうり)和子・早稲田大学名誉教授(70)が、感慨深げに半世紀の歩みを振り返る。現代中国研究の第一人者の言葉に、出席者たちがうなずいた。

 選考委員の石澤良昭・上智大学長は「1940年代以降の中国を、社会主義・発展途上国・伝統という3つの切り口から、党・国家・軍という3つの機構がどのようにからみ合っているかを的確かつ明晰(めいせき)に分析した」と受賞理由を説明。白井克彦・早大総長は、「早稲田にアジア研究の拠点を作ってくれた立役者」と祝福した。

 同賞は、福岡市が市制100周年を記念して平成2年に創設。アジアの文化振興と相互理解の促進が目的で、昨年までに計81人が表彰された。学術研究賞はこれまで、米国の文化人類学者のクリフォード・ギアツや、ナショナリズム研究者のベネディクト・アンダーソンら、国際的に著名な学者が受賞してきた権威ある賞だ。日本人の受賞は平成18年の濱下武志・龍谷大教授以来となる。

 「中国は私の研究なんか気にしていない。もうけるために一生懸命で、もう勝手にしてくれと言いたくなるようなものすごい発展ぶり」。毛里さんは、中国の急成長をユーモラスに評したうえで、「最近は中国モデルという無謀なものを提起するほど元気がいいが、必ずどこかに落とし穴があるに違いない。それがどこか、われわれ学者はしつこく迫っていきたい」。笑いを交えたスピーチの中にも、対象に鋭く迫る研究者の顔をのぞかせた。( エドハーディー キャップ