【金元工作員来日】曲折乗り越え証言へ 北への圧力に (1/2ページ)

アバクロ このニュースのトピックス:北朝鮮拉致事件
金賢姫元北朝鮮工作員を乗せ、羽田空港に到着した政府チャーター機=20日午前4時15分、共同通信社ヘリから金賢姫元北朝鮮工作員を乗せ、羽田空港に到着した政府チャーター機=20日午前4時15分、共同通信社ヘリから

 金賢姫元工作員が大韓航空機爆破事件の実行犯として逮捕されてから23年。北朝鮮の闇を知る「生き証人」はさまざまな障壁を乗り越えて、横田めぐみさんに関する新情報を両親に伝えることになった。内容にかかわらず、金元工作員の証言は北朝鮮に圧力をかけることになりそうだ。(桜井紀雄)

 「今まで聞かれなかったから」。金元工作員は、最近までめぐみさんについての証言をしなかった理由を日韓の関係者にこう説明したという。金元工作員は逮捕後、「『李(リ)恩恵(ウネ)』という日本の女性から日本語を教わった」と供述。日本の警察当局は「李恩恵」が、昭和53年に北朝鮮に拉致された田口八重子さんだと突き止める。だが、田口さんに関する供述だけに関心が集まり、ほかの被害者について知っていることを聞かれることはほとんどなかった。

 2002(平成14)年9月の日朝首脳会談で金正日総書記が日本人拉致を認め謝罪した際、ほかの拉致被害者についても発言する機会が訪れたかに思われたが、そのとき金元工作員は身を隠さなければならない状況に置かれていた。

 「大韓機事件は韓国の自作自演で、金賢姫は偽者だ」。当時の政権の影響を受け、北朝鮮寄りの空気が漂う韓国内で、親北団体やメディアから追い立てられることになったのだ。金元工作員は当時の状況を「格子なき牢獄(ろうごく)」と語っている。

 対北強硬姿勢を取る李明博政権が発足し、金元工作員は徐々に発言し始めた。「田口さんの家族に会って話したい」と希望し、昨年3月に面会が実現。その後、「めぐみさんに会ったことがある。両親に直接話したい」と証言し始めた。日本でのめぐみさんの両親との面会は、「金賢姫」の存在すら認めていない北朝鮮にプレッシャーをかけることにもつながる アバクロ レディース